本稿では、多くの方が受講する診断士協会が主催する実務補習の概要を記載します。

登録・更新の要件

中小企業診断士資格の登録には3年以内に15点の実務ポイントが必要です。実務補習と実務従事の合計で15点を取得すれば要件を満たします。

なお、資格登録後の更新には5年間で30点が必要となります。

実務補習の概要

スケジュール

実務補習は例年の2月・7月・8月・9月に開催されます(日程は中小企業診断士協会のサイトに掲載されます)。

5日間コースは2月・7月・8月・9月の開催で、5点の実務ポイントを獲得できます。15日間コースは2~3月にのみ開催されます。内容は5日間コースを3セット実施するというものです。

なお、5日間1セットの日程中、1日でも休むと無効となり、実務ポイントを得られませんので注意してください。

チーム構成

メンバーは5~6名で、リーダー、財務、組織人事、生産、などに担当分けをします。指導員は1~2名つきます。

報告書の様式

報告書の大枠の構成は、現状分析、課題、提言の順番となります。

それぞれ、「経営戦略」「営業・マーケティング」「生産管理・運営管理」「財務・会計」等に分けて作成しますが、参加人数に応じて他の項目を追加することもあります。

ページ数は約90ページが上限となりますが、検討期間が短く、提供を受ける資料が限られている事情があるため、実際には1人10~15ページ程度で落ち着く例が多いようです。

実務補習の事前準備

Windows PC

ノートPCは業務の必須アイテムです。なお、診断士コミュニティではWindowsを使う慣行があります。一人だけMacを利用していたりすると、各自で作成した報告書ファイルを全体で統合する時にフォーマットが狂ってしまい、メンバー全員に迷惑をかけることになります。必ずWindowsマシンを用意しましょう。

Microsoft Office

実務補習の報告書はWordとExcelを用います(指導員によってはPowerPoint形式での作成を求める場合もあるようです)。ノートPCには、Microsoft Officeを必ずインストールしておきましょう。

互換ソフトも存在しますが、上記のMacの例と同じく、フォーマットがずれてしまってチームメンバーに迷惑をかける恐れがあります。純正ソフトの利用をおすすめします。

Dropbox

Dropboxでのファイル共有も診断士コミュニティでの必須ツールとなっています。こちらもインストールしたうえ、十分な記憶領域を確保しておきましょう。

WiFi接続環境(Pocket WiFiなど)

実務補習用のスペースではWiFiが使えない施設が指定されることが多い状況です。スマートフォンのテザリング機能やPocket WiFi等でネット環境を作れる状態にしておくことが望ましいです。

現実の経営診断においてはWiFiの利用は当たり前ですから、本来は協会側でWiFi環境ぐらいは整えるべきではないか、と筆者は考えます。ですが、協会の段取りが改善されるまでは参加者側で対応せざるを得ません。

名刺

一緒にチームを組む仲間、指導員の先生との名刺交換があります。中小企業診断士(登録予定)と記載した名刺を作成しておきましょう。なお、診断先とは名刺交換を行わないルールとなっています。チームメンバーに同一業界や取引先の人が含まれる場合などに不都合が発生するための配慮と思われます。

資格登録後に「登録予定」を外したものを作り直すため、「登録予定」と記載した名刺はごく短期しか使いません。このため、当面は簡易に作成する方式で問題ありません。ネットプリントのラクスル等を利用しましょう。

ノートと筆記用具

顧客訪問でヒアリングをしますから、忘れないようにしましょう。

受講申込完了通知書・受講心得・実務補習テキスト

協会から届いた資料一式は持参する必要があります。

受講心得と実務補習テキストをしっかり読んでおきましょう。これが実務補習メンバーの共通の出発点となります。

実務補習スケジュール

以下では、5日間コースの具体的スケジュールを解説します。「5日間」という名目ですが、実質的には自習期間にかなりの作業が必要になります。自習期間には夜の予定を極力入れず、作業時間を確保しておきましょう。

協会からの資料送付

約2週間前に協会から受講申込完了通知書・受講心得・実務補習テキストの資料一式が届きます。受講心得と実務補習テキストを読んでおきましょう。

指導員からの連絡

おおむね4~5日前に指導員から段取りや事前準備に関するメールが届きます。まずはチームの役割をメールのやりとりで希望を調整して決めます。

プロジェクト資料は事前に読んで、社長ヒアリングの質問事項や提案内容のイメージを作っておきましょう。業界理解の第一歩として、図書館などにある「業種別審査事典」の該当業種に関する情報を取得して出発点とするのが効果的です。業種別審査事典の所蔵図書館は、カーリルで検索できます(東京都の検索結果)。

1日目(木)

東京地区の実務補習は、初回参加者の集合時刻が8:45〜9:15頃と早いので注意してください。

初日には顔合わせと、社長へのヒアリングを実施します。チームの結束を深めるための飲み会が行われることが多いようです。

2日目(金)

全体的な分析と大まかな方向性を検討します。

作業期間(2日目と3日目の間)

自主学習と各自のパートを執筆する期間で、約一週間あります。この期間に実質的な提案書を作成することになります。まずは早めに使用する報告書のテンプレートを決めましょう。

また、実務補習の参加者は概して不慣れですから、「これでよい」と思っても指導員から「ちゃぶ台返し」をされることがあります。このため、リスク管理のためにも早めに一定の成果を作り上げ、チームメンバーや指導員とのすり合わせをするとよいでしょう。

3日目(土)

指導員からのフィードバックを受けた修正と、全体の調整を行います。

4日目(日)

最終的な調整と印刷を行います。キンコーズ等で印刷することが多いです。

5日目(月)

報告会と修了式があり、実務補習修了証書を受け取ります。終了後には、反省会と打上げを兼ねて飲み会を行うことがほとんどです。

まとめ

実務補習では同期診断士の間の絆が強まったとの経験談が多くあります。せっかく時間と費用をかけて参加する以上、楽しく過ごしましょう。