国家資格の中小企業診断士。難関資格と言われていますが、医師・弁護士・会計士・税理士などと違って独占業務がないため、活用方法は限定的とも言われます。

そこで、本稿ではこの「中小企業診断士」の活用方法を検討します。

診断士資格の課題

中小企業診断士の資格は、試験の難易度は高いのですが、下記のようないくつかの課題があります。

独占業務がない

医師・弁護士・公認会計士・税理士などの資格と異なり、資格保有者のみが従事できる業務がありません。このため、資格を取得したからといって、ただちに専門職に就職できたり、収入がアップするわけではありません。

更新要件が厳しい

資格の更新制度があり、5年間に①理論政策更新研修受講等5回以上と②30日間の「実務従事」が必要です。このうち②は中小企業とのつながりが乏しい企業内診断士にとって、特に重い負荷となります。

更新ポイントを稼ぐため、資格保有者が無料であるいは料金を払って業務を提供することもあるようであり、いびつな構造となっています。

供給過剰

上述の実務従事のノルマにも関連して、「無料でもよいからコンサルをしたい診断士」が市場にあふれ、供給過剰です。このため、サービス開発または集客で工夫しなければ激しい価格競争に追い込まれます。

診断士資格の使い方

上記のとおり課題があるため、診断士資格を取得する人・取得した人は、使い方をよく考えて人生設計をする必要があります。

自営コンサルとして収入を得る

まず、本業あるいは副業として、中小企業にコンサルティングを行うことがあげられます。

中小企業診断士の試験勉強で得た知識を役立てることができますし、軌道に乗せれば自律した働き方を実現できます。

コンサルティング会社への転職につなげる

自営ではなく、コンサルティングを行う会社に就職して実務能力を高める選択肢をとる人もいるでしょう。

中小企業診断士の試験勉強で得た知識を役立てることができますし、その先に自営コンサルを見据えている方もいるでしょう。

ただ、コンサルティング会社は、労働時間が非常に長い会社が多いですから、生活設計をしっかりと考えた上で入社されることをおすすめします。

企業内で活用する

中小企業診断士の資格取得が社内での手当獲得や部署異動のきっかけになることもあり、こうした利用方法も考えられます。

別サービスへのフックとして活用する

他の事業で収益化するための営業ツールとして活用する方法です。例えば医師・弁護士・公認会計士・税理士・不動産仲介業者・M&A仲介業者・システム開発業者などが提案をする際、より上流の企業戦略・事業戦略の観点から必要性を説得することは有効でしょう。

また、コンサルティング業務は労働集約的・非定型的・スポット的な業務となりやすく、長期間継続する収益を作るのは案外難しいものです。

大企業でもこうした考え方は採用されており、システムベンダーのアクセンチュアや野村総合研究所、監査法人のデロイトやEY、投資業のドリームインキュベータや経営共創基盤などが良い例です。

コンサルタントや経営企画人材とのつながりを事業にいかす

中小企業診断士を取得する人には、試験内容が一定の水準にあることもあって、学力に秀でた大企業やコンサル会社の社員の比率が多くなる傾向があります。この構造に注目して「友達づくり」をする、という考え方も成立します。

診断士資格を有効利用する過ごし方

自営コンサルとして収入を得るには

供給過剰の問題がありますから、差別化されたサービスか、あるいは独自の集客システムを構築することを心がけましょう。

差別化されたサービスの構築には、これまでの経歴で経験した強みから生まれます。また、今後どのような強みを構築するかを決めて戦略的に取り組むことによっても開発することが可能です。

集客については、オンライン・オフラインそれぞれのルートで工夫しましょう。

コンサルティング会社に転職するには

コンサルティング会社に入社するには、採用プロセスに応募して、書類選考と面接を受けて入社する形が一般的です。

チャレンジするのは景気拡大期が望ましいです。縮小期には顧客は比較的削りやすいコンサル経費を削るため、コンサル会社は採用どころではなくなります。

企業内で活用するには

企業内での部署異動に活用するためには、社内規定をしっかりと把握するとともに、社内営業が重要です。希望部署の意思決定者とつながりを作り、タイミングを見計らいましょう。

別サービスへのフックとして活用するには

あなたがすでに有している強みと連動させられないか、検討しましょう。

コンサルタントや経営企画人材とのつながりを事業に活かすには

診断士資格を通じてできたネットワークを活用して現在の仕事に活かす、新しい仕事を作る、など様々な形が考えられるでしょう。

実現したい将来ビジョンやそれぞれの経歴・スキルを踏まえて知恵を絞ってみましょう。